先月のMalucafe 美術部では「線」についてやりました。
まずは、目で見たものを手の動きに変換して線が引かれていく感覚を身体で感じてもらうため、Blind Contour というエクササイズをしてもらった(2枚目の絵)。二人一組になって、目は完全に描く対象(この場合相手の顔)だけをみて、紙を一切見ずに描く。まるで相手の顔の上を鉛筆でなぞるように、目で対象物に見える線を追いながら、それに合わせて、手に動く方向や強弱の指示を伝達していくわけだ。力の入れ具合で、太くなったり、細くなったり、濃くなったり、薄くなったり、画材によっていろいろなことが出来る。それを目で見ているものに合わせて変えていく。そしてそれを体で感じる。
これは、やってみるとすぐにわかるけれど、とても難しい。そして、不思議ととても楽しい。身体的なエクササイズだからか、上手く描ける訳がないので上手く描こうという責任から解放されるのか、ややこしいことぬきに線を引く感覚と見ることを楽しめる。
ここに絵を描く楽しさの原点があると思う。
今絵を描くのが楽しいと思っている人、もしくは、楽しいことばかりでもないけれど、仕事として絵を描いていたり、とにかく描くということの近くにいる人は、おそらく幼少期のどこかの時点で、手を動かし、楽しいと感じる経験をどこかで体験してるはずだと思う。子供の頃、何かを見て、好奇心が動き、描きたいという欲に応じて体が動く感覚を覚えているだろうか。
人の頭は知らず知らずのうちにいくつものタスクをこなしている。何かを見ながら絵を描くとき、常に二つの対象を見ている。描く対象と描かれるもの。自分の描いている絵をみて、失望したり、フラストレイトしたりするし、見ている対象をみて、そこに魅力を感じずに楽しくないこともあるかもしれない。どちらを見て、どちらに対して、どのように感じて、どのように体を動かそうとしているのか。そんな行動の一つ一つを紐解いていって無意識と意識の動きを再確認していけば、自分が改善するべきことも見えてくるんじゃないかと思う。
これを踏まえて、次に実際に描くときは、今までに取り入れた知識を組み合わせる(3枚目の絵)。はじめに構図を決めたり、単純な図形として大まかな形をとったり、見る対象の質量のようなものをガイドラインとしてなるべく大きく捉えて記していく。バランスやプロポーションなど、正確さを追求するのはこの時。この時に、細部は置いておいて、全体像をしっかりとみて、直せるところはしっかり直す。あとはその骨組みの中に、細部をよく見ながら気づいたことを線を使って記していく。線にその人の個性やその時の心の状態が出ると思うので、線を描くときに自由でいられるように知識や技術でサポートするようにすればいい。
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